【写真レポ】奥鬼怒温泉郷秘湯ハイク -深山に抱かれた魅惑の湯へ-

【写真レポ】奥鬼怒温泉郷秘湯ハイク -深山に抱かれた魅惑の湯へ-
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「奥鬼怒温泉郷」と聞いて分かる方はその筋ではかなりのツウだ。

栃木県と群馬県の県境地帯、鬼怒川の源流部に当たる深山にそれは存在する。

人々が湯を発見した正確な時期は不明で、1980年代まで電気や電話、宿まで通じる道路といったインフラは整備されず、わずか30年ほど前までは自身の脚で辿りつけた者のみが入浴を許されていた秘湯中の秘湯です。

最近はどこでも遭遇するようになってしまった海外からの団体客なんぞ一切見かけません。

そこには、ゆっくりと静かに流れる時が我々のために残されているのである。

さあ、最高の魅惑へ行こう!

(奥鬼怒温泉郷へ通じる奥鬼怒スーパー林道入り口。ここから先は一般車進入禁止)



自然と温泉があれば何もいらない

(温泉郷近くの沢。このような沢がいくつも集まって鬼怒川となる)

我々の日常生活は忙しい。

「忙しい」というのは時間的な意味も勿論だが、それ以上に「手元にないと落ち着かないモノ」というのが多過ぎる生活になってしまいました。

例えばスマホなんかはその最たるモノで、落ち着かないどころか不便すら感じるようになってしまい、単なる便利ツール以上の存在感に時々ストレスを感じてしまうのは私だけでは無いはず。

便利になればなるほど、それだけモノに生活を支配される割合が増え、ちょっとしたことでもストレスを感じやすくなってしまったのではなかろうか。

本来、そんなモノは必要なかったハズなのに不思議ですよね。

いつからこんな息苦しい日常を常と思って過ごすようになってしまったのか、考えても後戻りは出来ません。

対して、そんな日常の色々を全て放り出して、沢のせせらぎや鳥たちのさえずり、風が木々をそっと撫で巡る様子に静かに耳を傾け、新緑と青空を仰ぎながらゆっくり湯に浸かる、そんな過ごし方が奥鬼怒温泉郷での日常です。

スマホが無くてもソワソワもイライラもせず、悩み事や嫌な上司の顔さえさっぱり忘れ、ただ単に生きている喜びを感じている自分に気が付いた時、本当の解放感が全身を駆け巡ると思います。

丸裸の素の人間を楽しめば、それで良いのである。

奥鬼怒四湯

奥鬼怒温泉郷には4つの温泉宿があり、まとめて「奥鬼怒四湯」、それらが在る地域が「奥鬼怒温泉郷」と呼ばれています。

四湯とは加仁湯、八丁の湯、日光澤、手白澤の4つを指し、加仁湯の様な設備が整った比較的大きな宿から、日光澤のように令和の時代になっても昔ながらの山小屋然とした姿を貫く宿まで、非常に個性豊か。

また、そのうち手白澤以外の3つは日帰り入浴も可能です。

早朝に都心を立ち、お昼前ぐらいからハイキングがてら奥鬼怒温泉郷まで歩いた後、湯めぐりをして汗を流すことも可能なんです。

もっとも、マイカーで行ったとしても都心から片道5~6時間はかかる場所故、時間が許すのであれば是非宿泊を検討したいところ。

加仁湯と八丁の湯では宿泊者に限ってマイクロバスによる送迎も行われ、冬場や体力に不安がある人でも気軽に出向くことが出来ます。

勿論、温泉だけでなく食事も素晴らしい。

岩魚や山菜は地場のものが使われ、時期によってはイノシシ肉やクマ肉などのマタギ料理も楽しめます。

温泉でゆっくり汗と日頃の汚れを落とし、浴衣に着替えて地の物に舌鼓を打つ。

宿が薦める日本酒でも一緒に頼めば、もうこれ以上の贅沢はこの世には存在しないとさえ思え、自然と、人間として生きていることにだけ幸せを感じられるだろう。

夜は、談話スペースで宿泊客やオーナーさん達と語らうのも楽しいですよ。

常連客も多いので輪に入るのにチョット勇気が要るかもしれないが、思い切って話しかけてみましょう。

ますます、秘湯の魅力に憑りつかれると思います。

(加仁湯外観。秘湯らしからぬ立派な宿。宿泊客は送迎もあるので冬でも安心)



周辺の山

奥鬼怒温泉郷へ行く際、時間が許せば是非とも周辺の山々にも登ってみたいところ。

日本百名山に入るような全国に知れ渡った有名な山は無いのだが、その分ゆっくりと登山を楽しめる穴場スポット的な山ばかり。

根名草山、鬼怒沼湿原、黒岩山等が代表的なところで、健脚者であれば同じ山域にある尾瀬へもアクセス可能です。

こういった山々に登るガイドツアーを開催している宿もあり、それを利用するのも良いですよ。

自力で行く場合には、事前の下調べをしっかりしておこう!

宿屋の主人にでも聞けば十分な答えが返ってくると思いますが、まずは自分でも調べるのは登山者としての常識です。

登山ブームの時代にあっても比較的静かな山域はメリットでもあるが、万が一の際にはデメリットにもなりやすいですし、土地勘の無い者が人気の少ない登山道を選んでしまうと、険しい奥鬼怒の山中では危険です。

どれも決して難しい山では無いし、展望やその場の景色も素晴らしいものばかりなので、準備をしっかり行った上で楽しんでみてはいかがでしょうか。

(黒岩山山頂のプレート。展望もあり、燧ケ岳や至仏山も望める)

(黒岩山山頂直下の案内。尾瀬方面へは最近の記録も少ないので、下調べはしっかりと)

山に登らずとも、奥鬼怒温泉郷へ至る遊歩道や林道を歩くだけでも十分に楽しめます。

各宿へ通じる奥鬼怒スーパー林道の入り口の夫婦渕温泉(めおとぶちおんせん)からは鬼怒川沿いに未舗装ながら遊歩道が整備され、子供やお年寄りでも歩きやすいです。

初夏~夏~秋にかけては季節も良く、手軽に大自然を満喫出来る道ですよ。

それでも心配な場合は、奥鬼怒スーパー林道を歩くのもオススメです。

一般車両が進入禁止というだけで、未舗装ながら立派な林道。

道に迷う心配も無ければ、宿の送迎車や宅配便などの業者の車がそれなりの頻度で走っているので万が一の際にも安心です。

(奥鬼怒スーパー林道の道中。整備の行き届いた立派な林道であり、奥鬼怒温泉郷にとっては重要な生活道路)

気になるアクセス方法は…!?

奥鬼怒温泉郷に入るには、まずは夫婦渕温泉(めおとぶちおんせん)という所が入口となります。

ここから始まる奥鬼怒スーパー林道は、一般車進入禁止なので注意しましょう。

大きな駐車場が整備され、公衆トイレや自販機もあり、マイカーで来た場合にはここで車を置きます。

それからは、宿の送迎バスに乗り換えるなり、遊歩道やスーパー林道を歩き始めることになります。

ここへ至る山道は急カーブが連続する狭い道なので、運転に自身の無い人や冬季は、東武鉄道の鬼怒川温泉駅前からの日光市営バスを利用すると良いですよ。

所要時間は約1時間半。

市営バスの発着に合わせて宿の送迎バスも運行されているので、市営バスを降りれば宿の送迎車にスムーズに乗り換えが可能です。



日本人に残された最後の秘湯

国策でもある訪日外国人の増加によって、今やどこに行っても彼らの姿を見かけるようになりました。

彼らの存在や文化を否定することは決して無いですし、異文化交流が出来ればそれはそれで楽しいと考えています。

しかし、気心知れた日本然とした環境で身体を休めたくなる時もあるのが実際ではないでしょうか。

そんな事が出来る数少ない残された秘湯、それが奥鬼怒温泉郷。

アクセスこそ悪いが、それ以上に五感で感じる四季の移ろいや大地とそこに生きる動植物の息遣いは価値のあるもの。

その中で得られる休息は、ジム通いや皇居ランニングなんかよりもずっと体に良いと思います。

是非、一度足を運んでみてはいかがでしょうか。

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